平成17 平成17年度予算特別委員会 (第2 310日)

○(岸口実 委員)  ひょうご・県民連合を代表して、歳入審査をしたいと思う。
先ほど丸上委員の質問の内容を聞いていて、私の質問と少し重なるところがあったので、何か半分ぐらい答弁を聞いてしまったようなところもあるが、通告どおり質問をしたいと思う。
まず、第1に、地方分権を見据えた望ましい税財源の移譲と自主財源のあり方についてお尋ねをする。
私は、昔、学校で「3割自治」ということを習った。地方自治体の自主財源となる地方税収入が3割から4割程度しかなく、残る6割から7割の部分を国からの地方交付税交付金や国庫支出金に依存していること、また、地方公共団体の事務内容が国の事務を代行する機関委任事務が大半を占めていたからだと記憶をしている。戦後の荒廃の中からの復興期、国のめざした方向性、目的を考えると、時代にマッチした制度であり、その結果、国土の均衡ある発展がなされたわけである。
地域の発展とともに、それぞれの地域のニーズや価値観が大きく変わり、行政改革の中から地方分権が議論され始めた。1995年に地方分権推進法、また、1999年に地方分権一括法が成立し、2000年に施行され、そして昨年の三位一体改革議論へとつながっていったわけである。
今や機関委任事務制度が全廃をされ、自治事務と法定受託事務に分けられたところであるが、税財源の移譲は大変おくれている。地方自治体においては、それに見合う自主財源の確保、税財源の移譲はこれからの重要な課題となるわけである。地方財政の自立が求められるわけである。これからは、財政の健全化や自立に努力をした自治体と努力をしなかった自治体との差が大きく開くこととなる。
平成17年度の歳入予算額2兆1,112億3,100万円のうち、自主財源が1兆1,634億9,800万で55.2%となっている。歳入面で見ると5割自治ということになるが、これからの地方分権を見据え、望ましい税財源の移譲と自主財源のあり方について、まずお尋ねをする。

○(荒川企画管理部長)  難しいご質問をいただいたが、国・地方の機能を見直し、今日これからの成熟社会にふさわしい分権システムをつくるためには、地方が自己決定して自己責任をとるということが不可欠であり、そのために、まず財政面での自治の確立というのは当然の前提であろうかと思う。
このために、地方が担う事務について、例えば災害の復旧・復興に係る補助金のように、特定の地域で、また臨時・巨額に財政負担が必要になるといったものは除き、そのすべてが地方税を初めとする自主財源あるいは地方交付税で実施できるような、そういう税財政制度をつくり上げるということが原則であろうかと思う。
こう考えると、国から地方への税源移譲に当たっては、安定的で地方ごとの偏在性が少ない地方税体系を構築するという観点に立つと、まずは、基幹税と言われている所得税から個人住民税への移譲を行うべきであろう。その上で、これは19年度以降の第二期改革ということであるが、同じく基幹税である消費税から地方消費税への移譲ということも考えていくべきだろうと思う。
なお、こうした税源移譲を行ってもなくならない税源の偏り、偏在については、地方交付税による調整が必要であり、地方交付税の果たす財源調整機能といったものについても充実強化していくということも重要なことであると考えている。

○(岸口実 委員)  全く同感であるが、ただ、自主財源をいかにふやしていくか、その比率を上げていくかということが、私は三位一体の一番基本だと考えている。今後ともご努力をお願いしたいと思う。
続いて、第2に、財源対策についてお尋ねをする。
その1として、収支不足の状況と対策についてである。
平成17年度の当初予算については、平成16年度に大幅に削減された地方交付税及び臨時財政対策債の影響がなお残っていることから、引き続き極めて厳しい財政環境にあるとのことであった。
このような中、昨年度の台風23号を初めとする一連の風水害からの復旧・復興対策など、新たな財政ニーズに配慮する必要もあり、「行財政構造改革推進方策後期5か年の取組み」を基本に、行財政全般にわたる徹底した見直しを行うなど、予算編成に当たり、引き続きご苦労をされたと聞いている。
そこで、17年度における収支不足がどの程度あるのか、また、それに対してどのような対策を講じたのかについてお尋ねをする。

○(竹本財政課長)  県税収入などの大幅な財政収入の増加が期待できない中においても、行財政運営が適切に行えるよう、行財政構造改革推進方策を策定したところであり、昨年度は、県議会のご理解も賜り、後期5か年の取組みを策定したところである。
この中で、平成17年度の収支不足額を790億円と見込んでいたが、平成16年度に地方交付税や臨時財政対策債が大幅に削減された影響がなお残っていることなどから、収支不足額は790億円から990億円と200億円拡大したところである。
このため、健全財政を維持する中で、県債の発行を行うとともに基金の活用をしたことに加え、16年度に引き続き、退職手当債の発行100億円及び企業会計からの借入金100億円という特別の財源対策を講じたところである。

○(岸口実 委員)  先ほどのご答弁にあったとおり、財源対策の内容について、実は次に質問しようと思っていたが、この企業会計からの100億円であるとか退職手当債の100億円の借り入れ、こういったことになると、それぞれの企業会計であるとかの体力の低下が懸念をされるところであるが、そこで、これらの緊急的・臨時的な財源対策の具体的な内容についてお尋ねをしたいと思う。

○(竹本財政課長)  まず、退職手当債であるが、退職手当債は地方財政法第5条、いわゆる起債というのは地方財政法第5条に規定をされているが、そこでいう起債の特例として、定数条例の改正により職員定数の削減が行われた場合に、定数削減の範囲内で、かつ勧奨退職者に支給する退職手当の財源として発行することができる特例的なものである。職員を退職させることにより節減した経費をもって償還財源に充てるとともに、将来の財政構造の健全化にも寄与するという観点から認められているものである。
なお、16年度当初のときには100億円ということで予算に計上したが、所要額を精査するとともに発行額の抑制をし、2月補正予算においては、20億円減額し、80億円としているところである。
また、一方、公営企業からの借り入れであるが、企業庁が所管をしている会計の中で、土地、建物などの企業資産の運用を行っている企業資産運用会計から100億円を借り入れようとするものである。これは16年度と同様である。
しかしながら、委員ご指摘の点もあるし、また、16年度においては、法人関係税収で増加が見込まれるというふうなこともあり、平成16年度における企業会計からの借り入れ100億円は取りやめて、2月補正で減額をしたところである。17年度においては、その100億円を一般会計で借り入れようとするところである。

○(岸口実 委員)  次に、この今後の対応についてお尋ねをする。
今回、平成16年2月に策定された「行財政構造改革推進方策後期5か年の取組み」から変動要素を加味した「今後の財政収支見通し」の試算を発表している。心配をすれば切りのないことであるが、特にこの試算の前提条件となっている経済成長率であるとか自然災害を初めとする財政ニーズなど、不安を感じるところが多くあるわけであるが、これによると、平成18年度から平成20年度までの3ヵ年での収支不足額が約1,020億円増加すると発表をされている。
これは、地方交付税と臨時財政対策債が、平成16年度に、三位一体改革の名のもと、国の財政負担の軽減のみを目的として約500億と大幅に削減されたことによるものであると聞いている。
「後期5か年の取組み」では、「平成18年度までに取り組むこととされている三位一体改革の動向によっては、収支不足額が拡大することも懸念されていることから、必要に応じて財政見通しの見直しを行う」としている。このことは簡単な問題ではなく、限られた時間でこれまで以上に一層の歳出削減と歳入の強化策が求められることになる。また、安易に県債に依存するということがあってはならない。
そこで、この収支不足額をどのように認識をし、今後どのように対応していこうとするのか、お尋ねをする。

○(高井企画調整局長)  このたびの再試算は、地方交付税あるいは臨時財政対策債が三位一体改革の名のもとに大幅に削減された平成16年度の年間予算、これを基本として、これに前提となる経済成長率を内閣府の直近の試算などに置きかえ、いわば機械的に計算したものであり、ご指摘にもあったように、仮にこのまま推移すれば、18年度から20年度までの3年間で収支不足が1,020億円増加すると見込まれるとしたところである。
しかしながら、一方で、先ほど来議論になっているような、国の三位一体改革における税源移譲の具体的な内容、あるいは地方交付税改革の動向、さらには景気変動に伴う法人関係税を初めとする県税収入の動向など、今後の推移を見きわめるべきさまざまな変動要素も想定されるところである。
したがって、現時点で直ちに、昨年の2月に取りまとめた推進方策の再度の見直しを行うというところまでは至っていないというふうに考えてはいるが、今後とも、行財政運営を取り巻く諸条件の推移を注意深く見守りながら、引き続き限られた財源の重点配分と経費支出の一層の効率化に努め、財政の健全性の確保を図っていきたい。
また、ご指摘の県債についても、発行条件あるいは交付税措置の内容といったものを勘案しながら、将来に及ぼす影響を踏まえつつ、節度を持った活用に留意していきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  よろしくお願いしたいと思う。
次に、基金についてお尋ねをする。
まず、基金運営の考え方についてである。
兵庫県では、財産の維持、資金の積み立て、定額資金の運用などを目的に、平成16年度末現在で合計22の基金が設置をされている。厳しい財政状況が長期化する中で、新たな行政ニーズに的確に対応するとともに、一定の行政サービスを継続していくためには、予算編成上、歳入の確保が最重要課題であり、今後も基金を活用した財政運営を余儀なくされる状況が当面続くのではないかと考える。
その基金の残高を見ると、平成4年の4,001億円をピークに減り続け、平成17年度当初には1,497億円と減少をしている。中でも財政基金の残高はほぼゼロとなっている。
このような状況の中で、今後の基金運営の基本的な考え方について、まずお尋ねをする。

○(竹本財政課長)  本県に設置している22の基金については、それぞれの基金の目的に応じて積み立て・取り崩しというものを行っている。現下の厳しい財政環境のもとでは、当分の間、財政調整的な基金の総額というものが縮小することは、私どもとしては避けられないのではないかというふうに考えている。また、特定目的基金についても、その目的の範囲内での活用を図っていかなければならないのではないかと考えている。
しかしながら、安定的な行政水準を維持するという観点からは、一定規模の基金というものも確保しておくことは当然のごとく必要である。今後とも、基金残高に十分留意しながら、中長期的な視点に立った基金の活用というものを図っていきたいと考えている。
なお、17年度に基金残高が減少するのは、平成7年度に導入した縁故債の10年満期一括償還の財源として県債管理基金に積み立ててきた額を、計画どおりに取り崩すこととしたことによるものである。

○(岸口実 委員)  次に、基金の運用についてお尋ねをする。
基金は、地方自治体の財産として、確実かつ効率的に運用しなければならないとされており、その運用方針は自治体の裁量権にゆだねられている。厳しい財政運営が長期化する中、自主財源を少しでもふやすためには、積極的な、また有利な運用を図る必要があると考える。先日、宝塚市の外郭団体が外国債で損失を出したとの報道もあったが、有利な運用にはリスクはつきものである。
そこで、まず、どのような基準で運用されているのか、また、これまでの基金の運用実績と、基金をできる限り確実で有利な運用を行うための今後の取り組みについてお尋ねをする。

○(藤田資金管理課長)  ご指摘のように、基金は「確実かつ効率的に運用しなければならない」とされており、本県でも、この考え方を運用の基本方針としている。すなわち元本の確実な償還を第一に、リスクを最小にした上で、有利な運用を行うこととしている。
県が保有する22の基金の、直近、平成16年度における運用実績は、低金利が続く昨今ではあるが、平均運用利回りで約0.71%、利子収入で約15億5,000万円程度を確保できる見込みである。
今後の取り組みであるが、これまで同様、長期運用が可能な資金は、兵庫県債または国債等、元本の償還が確実な債券等で運用を行い、また、短期的な運用を行う資金については、大口定期等で運用することとしている。なお、その預け先については、安全性及び有利性を確保するため、担保提供もしくは県債引き受け等により相殺債務が設定されている金融機関を対象に、入札方式により決定していくこととしている。これからも安全性を第一に考えながら、可能な限り有利な運用を行い、収入の確保に努めていきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  本当に金利の低い時代であるが、ご努力をよろしくお願いしたいと思う。
次に、使用料・手数料についてお尋ねをしたいと思う。
その1として、改定の基本的な考え方についてである。
県立施設の使用料や各種申請手続に係る手数料については、現在の経済情勢のもとでは、安易な引き上げは実施すべきではないと考える。
しかしながら、一方では、厳しい財政状況の中、適切な財源の確保が喫緊の課題でもある。
このことから、使用料・手数料の改定については、他の類似施設との公平性の確保と住民サービスの維持・向上を基本とし、県民に合意が得られるような明確な根拠により実施し、適正な使用料・手数料を徴収することが重要であると考える。
そこで、まず、使用料・手数料の改定の基本的な考え方についてご質問する。

○(竹本財政課長)  使用料・手数料については、県立施設の利用、また運転免許の交付や検査事務などに対する役務の提供、これら特定の行政サービスに対し負担の公平性を図るという観点から、受益の程度に応じ負担していただいているところである。
具体には、新たに使用料・手数料を設定する場合は、それぞれの行政サービスに要する経費の全部または一部を負担いただくことを基本としつつ、類似施設との均衡なども考慮して決めている。また、改定に当たっては、物価上昇や国・他の地方公共団体との比較を行い、適正化に努めているところである。
なお、17年度においては、新たにオープンする施設の使用料を設定する一方、国に準拠すべき手数料を除き、物価の状況等を考慮し据え置くこととしたところである。

○(岸口実 委員)  次に17年の主な改正点についてお尋ねをしようと思ったが、先ほどのご答弁にもあったので、省略をしたいと思う。
次に、ペイオフ全面解禁に向けた本県の対応についてお尋ねをしたい。
金融機関が破綻した場合に、預金など払戻保証額を元本1,000万とその利息までとするペイオフの全面解禁が4月に実施されることとなっており、目前に迫っている。このペイオフ全面解禁によって自治体の公金管理と運用の力量が問われることになる。
既に、平成14年4月に定期性預金についてはペイオフが解禁されていることから、県においても既に公金保全のための対策を講じていると思われるが、普通預金など決済性預金を含めたペイオフ全面解禁に向けた県の対応を改めてお尋ねする。

○(荒川企画管理部長)  ご指摘のように、平成14年4月から定期性預金についてはペイオフが解禁されていることから、県においても既に公金保全の対策を講じている。
具体的にいうと、まず、基金などの運用金については、元本償還が確実な県債などを購入するとともに、担保や相殺債務で保護可能な範囲内で、金融機関へ預金を行っている。また、制度融資に係る預託金については、預託方法を定期性預金から全額保護される決済性預金、具体的には有利子の普通預金ということになるが、これに変更をしたところである。
ペイオフが全面解禁されるこの4月以降であるが、これまでと同様に、コスト負担が少なく、かつ地域経済などへ悪影響が生じないように配慮して、公金の保護を図りたいというふうに思っており、「制度融資の預託金」、それから「日々の支払いに必要な準備金」については、現在の有利子の普通預金などがペイオフの対象となるので、預金保険で全額保護される無利子の普通預金などの決済用の預金を活用して、保護を図りたいというふうに思っている。

○(岸口実 委員)  よろしくお願いをする。
次に、法人事業税についてお尋ねをしたい。
まず、その1として、17年1月末の業種別状況についてお尋ねをする。
新聞報道によると、平成16年の国内株式市場の新規上場社数は、景況感が底がたく、業績の先行きに自信を持つ上場予備軍がふえたため、4年ぶりに前年を上回り、過去3番目の高水準であったとされている。
また、16年度の予想連結経常利益が1,000億以上となる企業は、世界的な需給逼迫の追い風を受けて収益が拡大する素材メーカーや海運企業が新たに加わったことにより、前年度より22社ふえ、過去最高の60社になると言われている。
さらに、16年度9月中間決算の集計では、全産業の連結経常利益は、デジタル家電の販売が好調だった電機や値上げ効果が出た鉄鋼などが牽引役となり、前年同期に比べ39%の増加となっているようである。
こうした中、県税収入の大きなウエートを占める法人事業税について、17年1月末の現年調定額は前年同期と比べてどのような状況になっているのか、また、業種別の状況とあわせてお伺いをする。

○(宗野税務課長)  平成17年1月末現在の法人事業税の現年調定額は、15年度の企業業績の回復基調を反映した3月期決算法人の5月申告分が大幅に伸び、その後も16年度の好業績を反映して、対前年同期比124.2%と高水準を維持している。
業種別の状況を見てみると、製造業は、繊維が、合繊事業の厳しい収益環境が続いたことから対前年同期比74.9%と前年度を下回ったものの、化学が、中国向け石油化学製品の需要増等により同129.5%、機械が、国内外の設備投資の増加や建機需要の回復が進んだことから同238.4%となるなど、ほとんどの業種で前年度を上回ったため、全体でも対前年同期比144.2%と前年度を上回っている。
また、非製造業は、電力が、昨年度は一部法人において施設が本格稼働し確定申告が大きかった反動から対前年同期比97.1%と前年を下回ったものの、小売が、ローコスト経営により収益力が回復したことから同118.3%、卸売が、不採算部門からの撤退と利益を生む中核事業への集中化などにより同127.0%となるなど、多くの業種で前年度を上回ったため、全体でも対前年同期比114.2%と前年度を上回っているという状況にある。

○(岸口実 委員)  次に、17年度の税収見込みについてお尋ねをしたい。
報道によると、兵庫県内の上場企業を見ると、ここ数年、事業の再編やコスト削減などリストラを進めた結果、利益の出やすい体質への転換が進み、好業績につながり、昨年9月期の中間決算では、バブル期をしのぐ過去最高益となった企業も多く、9割以上が黒字を確保したとのことである。その状況を受けた平成17年1月末の法人事業税収入は、現年・繰越合計額で前年同期比122.4%と大幅に前年を上回るようであるが、また、法人事業税収入に大きな影響を与える3月期決算の上場企業に関する中間決算発表によると、平成17年3月期決算は、電機や自動車が高水準の利益を稼ぎ出すほか、国際商品価格の上昇を追い風に鉄鋼や化学などの素材産業で増収効果が高まり、2期連続で過去史上最高益を更新する見通しとなっている。これを前提とした17年度当初予算の法人事業税の計上額は、16年度2月補正後予算比109.0%となる1,365億1,900万を見込んでいるようである。
しかし、不安材料もないとは言えない。これまでの景気低迷の影響による企業の体力の低下や為替や原油動向によって大きく決算に振れを引き起こす。
そこで、法人事業税の17年度当初予算計上額の算定方法及び16年度決算見込み額と比較した業種別の状況についてお尋ねをする。

○(宗野税務課長)  平成17年度の法人事業税の算定については、まず、県下の代表的な大法人130社に対しては、会社公表資料等から今後の業績予測を把握した上で、過去の業績と納税額との乖離を考慮し、個別に税収を見込んでいる。
また、その他の法人については、本県の税収動向に関連の深い法人を選定、25業種約400社であるが、その法人を業種別に分類した上で、業績予測等と過去の税収状況を考慮して算定をしている。
これに税制改正の影響額を盛り込んだ結果、委員ご指摘のとおり、法人事業税収を1,365億1,900万円、対前年度比109%と見込んだところである。
業種別の現年調定額については、製造業は、化学が、薬品関連で薬価引き下げが減収要因となり87.6%、機械が、ハイテク業界の設備投資のピークアウトが懸念材料となり93.3%と前年度を下回るものの、電機が、薄型テレビやDVDレコーダーなどが好調なため127.6%、鉄鋼が、需給逼迫により228.2%となるなど、製造業全体では110.3%となっている。
非製造業については、サービスが、レジャー関連の低迷もあり94.6%、小売が、営業が低調なことから98.1%と前年度を下回るものの、卸売が、ほぼ全分野で増益が見込まれることから140.6%、運輸・通信は、海運が好調なことから117.2%となるなど、非製造業全体では105.8%となっているところである。

○(岸口実 委員)  次に、分割基準の見直しの背景と内容についてお尋ねをする。
法人事業税の分割基準は、平成元年度に改正されて以来、相当年数が経過している。近年、IT化の進展やアウトソーシングの活用、法人の事業活動形態も変化してきており、ここ数年、税源帰属の適正化が求められてきたところである。
昨年末の平成17年度税制改正大綱において、法人事業税の分割基準の見直しが国より示されたところであるが、こうした見直しがなされることになった背景と具体的な見直し内容についてお伺いをする。

○(宗野税務課長)  法人事業税の分割基準については、平成元年度に改正されて以来、16年間にわたって見直しがされておらず、その間、委員ご指摘のとおり、法人の事業活動を取り巻く環境が大きく変化する中で、近年、社会情勢の変化に、より適合した分割基準にすべきであるということ、各都道府県の事業税収の構成比と事業活動規模の構成比が乖離しているのではないかなどの指摘がなされていたところである。このような状況を踏まえ、平成17年度税制改正大綱では、法人事業税分割基準を見直すこととされたところである。
具体的な見直しの内容の1点目は、非製造業については、現行では、一部の業種を除き、課税標準を従業者数により関係都道府県に分割をしているが、これを課税標準の2分の1を事務所数により、残りの2分の1を従業者数により分割しようとするものである。
これは、法人の事業活動を支える要素として、人的な要素のほかに、事務所の立地等が非常に重要になってきていることを踏まえて、事務所数を基準として加えることとしたものである。
2点目は、資本金1億円以上の法人については、現行では、本社管理部門の従業者数を2分の1に割り落とす措置を行っているが、これを廃止するものである。
その理由としては、近年、事業部制や分社化の導入で、法人の組織形態が多様化し、本社管理機能が各地に分散しつつあるため、本社管理部門の2分の1の割り落とし措置を講じる意義が薄れてきているということなどが挙げられるところである。

○(岸口実 委員)  その分割基準の見直しについて、今度は税収への影響についてお尋ねをする。
平成16年度の法人関係税の税収は、景気回復傾向を反映して前年度を大幅に上回るとのことであり、さらに17年度についても、引き続き大幅な増収が見込まれていることは大変喜ばしいことであるが、この法人事業税の分割基準の見直しが実施された場合、何らかの影響が出てくるのではないかと思うわけである。
そこで、いつの時点から、どの程度の影響が出てくると考えているのか、お尋ねをしたいと思う。

○(宗野税務課長)  本県への影響額を平成15年度調定額ベースで試算してみたところ、非製造業における事務所基準の導入により約10億円の増収、本社管理部門割り落とし措置の廃止により約4億2,000万円の減収がそれぞれ見込まれ、合計では約5億8,000万円の増収を見込んでいるところである。
また、総務省のまとめによれば、東京都が約600億円、大阪府が約80億円の減収となる。その他の道府県はすべて増収が見込まれている。増収見込み団体のうち、本県と同程度の5億円から10億円の増収を見込んでいるのは、本県を含め20府県で、最多となっているところである。
なお、適用の時期が17年4月1日に開始する事業年度分であるため、本格的に税収に影響するのは18年5月末からの申告分となる。
○(岸口実 委員)  次に、県税事務所の組織再編についてお尋ねしたい。
本県の組織については、平成13年4月に大規模な再編整備が行われたところであるが、その後、市町合併の急速な進展などを踏まえ、現地解決型総合事務所としての役割に的確に対応するため、この4月から、県民局の企画立案・総合調整機能や専門的・技術的機能を一層強化するとともに、急速なIT化の進展も踏まえ、効率的で、県民にとってわかりやすい組織体制となるよう所要の整備を行うこととしている。
このような状況の中で、県税事務所の組織についても、個人事業税の所管事務所が一部変更になるなど、所管業務の見直しが行われるところであるが、県税事務所の組織再編に当たっての基本的な考え方をお尋ねする。

○(宗野税務課長)  県税事務所の組織の再編については、今回の地方機関の再編に係る県全体の考え方と同様に、1点は、専門的・技術的機能の一層の強化、2点目としては、効率的・効果的な事務執行体制の確保等の観点から、「圏域事務所」に業務を集約するとともに、これ以外の事務所については、県民サービスの低下等が生じないように、「地域事務所」として原則存置し、県民に身近な業務、現地性の強い業務を所管するという基本的な考え方のもとに再編を行ったところである。
具体的には、圏域事務所では、すべての税目に係る課税・徴収と収納、納税相談等を所管するとともに、税収確保対策等、圏域の企画調整機能を担うものとしたところである。
一方、地域事務所においては、県民の利便性等を考慮し、来庁者の多い自動車税、不動産取得税の課税・徴収業務と全税目に係る収納、納税相談等を所管することとした。
なお、圏域が広大な西播磨地域の龍野県税事務所、但馬地域の和田山県税事務所及び大都市を所管する神戸地域の西神戸県税事務所については、県民の利便性等を考慮し、引き続き個人県民税・事業税の課税・徴収業務を所管することとしたところである。

○(岸口実 委員)  続いて、先ほどの基本的な考え方に基づいて、県民への周知及び事務の円滑な移行についてお尋ねをしたい。
事務の効率化、業務執行体制の強化を図るため、圏域事務所に業務の集約を行うというふうに先ほどのご答弁でもあったし、また、一方では、地域事務所は県民に身近な業務を所管することにするとのことであるが、その基本的な考え方については理解をするところであるが、県民から見ると、県税事務所ごとに所管する税目が異なることになるわけである。このことにより県民の混乱を招く可能性もある。
そこで、新体制について県民への周知を十分に行う必要があると思うが、どのように取り組んでいくのか、お伺いをする。また、4月から県税事務所の事務を円滑に行うには、短期間に大量の移行作業が必要となるが、どのように対処していくのか、あわせてお尋ねをする。

○(宗野税務課長)  平成17年4月からの県税事務所の再編については、県民に混乱が生じないよう十分留意しながら移行する必要があると考えている。
このため、県民等への周知については、「県民だよりひょうご」等を利用した県民局再編全体の広報に加え、県税事務所の再編の内容等をわかりやすく説明した独自のリーフレットを作成し、県税事務所はもとより、市町役場、税務署などの窓口に配布するほか、所管事務所が変更になる税目については、納税通知等を送付する際にチラシを同封し個別に周知を図るなど、きめ細かな広報を実施していきたいと考えている。
また、再編に伴い、大量の課税データの移行や税務電算システムの修正などが必要になることから、移行作業の進め方については、各税務事務ごとに各県税事務所と税務課の職員が連携して十分な検討を行ったところであり、その結果をもとに作成した手引等を活用しながら、円滑な移行作業に万全を期していきたいと考えているところである。

○(岸口実 委員)  特にこの県民への周知徹底はよろしくお願いをしたいと思う。特に県の行うサービスの窓口となる部分であるので、とりわけ本当によろしくお願いをしたいと思う。
次に、不動産取得税の震災特例控除についてお尋ねをする。
阪神・淡路大震災からことしでちょうど10年が経過をした。県内各地に甚大な被害をもたらしたあの大震災からの復興のために、国・県等においてさまざまな支援制度が創設をされた。
不動産取得税についても、家屋所有者が被災し、代替家屋を取得した際に税の軽減を行う震災特例控除制度が平成11年度税制改正により設けられた。さらに、平成12年度税制改正により、制定時には平成12年3月31日までの取得を対象としていたものを、平成17年3月31日までの取得へと制度延長されてきたところである。
震災10年を迎え、さまざまな震災復興支援制度が終了する中で、この不動産取得税の震災特例控除制度は、平成17年度税制改正において、制度がさらに延長される見込みであると聞いている。
そこで、これまでの不動産取得税の震災特例控除の適用実績及び今後の制度延長の内容と、そのことに対する県の考えをお尋ねする。

○(高井企画調整局長)  この震災特例控除制度は、震災により被災した被災家屋の所有者等が、それにかわる家屋、代替家屋を取得した場合に、もとの被災した家屋の床面積等に応じて代替家屋の取得に係る不動産取得税の軽減を行うという制度であるが、本県でのこれまでの適用実績は、制度発足の平成11年度からこの17年2月末までの累計で、件数が6,835件、控除された課税標準額が約1,126億円、軽減税額のベースで約40億円となっている。1件当たりにすると60万円弱の軽減が図られたということである。
被災市街地においては、震災から10年たった現在でも、毎年数百件という単位で代替家屋の取得が続いている。そういうことから、震災特例控除制度は17年度以降も必要な制度であると我々も考え、その延長について国に対し要望を行ってきた。
その結果、平成17年度の税制改正において適用期限が2年間延長され、19年3月31日までの家屋取得が対象とされた。
さらに、被災市街地の一部の地域では、土地区画整理事業あるいは市街地再開発事業などがおくれているところもあり、換地の指定がおくれたことによって、家を建てようにも建てられないといったような特殊な事情があるので、そういった地域にあっては、この2年の延長に加えて、さらにもう3年の延長、すなわち平成22年3月末までの適用というふうになったところである。
今後も、これまでと同様、このせっかく措置された延長、これを活用していただくために、その広報に努めるなど、適切な制度運用に努めていきたいと存ずる。

○(岸口実 委員)  やはりまだまだニーズが多いようであるので、こういった制度については、ぜひ延長、そしてまた活用していただけるような制度の取り組みをよろしくお願いしたいと思う。
最後になるが、自動車税月割り計算廃止の周知と徴収対策についてお尋ねをする。
自動車税については、その賦課期日は4月1日であるが、賦課期日後に納税義務が発生した者には、その発生した月の翌日から月割りをもって自動車税を課すこととされており、県域を越えた移転登録や変更登録がなされた場合、月割り課税あるいは月割り還付を行うこととされている。ただし、賦課期日後に同一県内で移転登録があった場合においては、当該年度の末日に当該所有者の変更があったものとみなすこととされているところである。
このような制度のうち、今回の平成17年度税制改正においては、平成18年4月1日以降の登録から、県域を越える自動車の転出入に係る自動車税の月割り計算が廃止されると聞いている。このことにより、膨大な還付事務が廃止されることとなり、自動車税の課税業務の効率化も進むのではないかと考える。
しかし、一方で、自動車税は課税件数が多く、所有権移転等も頻繁にあることから、徴収には大変なご苦労が要る税目であると聞いている。
そうした中で、4月1日の賦課期日現在の登録名義人に年税額が課税されることになることから、年度の初めに自動車を手放した納税者には理解が得られにくいのではないかと考える。そのことによって、自動車税の滞納額が増加するのではないかと懸念されるところである。
そこで、このような制度改正の概要について、納税者や自動車販売業界等にどのような形で周知を図られるのか、また、どのような自動車税の徴収対策を考えているのか、あわせてお尋ねをする。

○(宗野税務課長)  今回の自動車税の制度改正により不要となる自動車税の還付事務は、年間約5万8,000件と非常に多くあることから、委員ご指摘のように、事務の効率化につながると考えられる。あわせて、現在は、所有者が同一であっても、県外への変更登録を行えば、転出元の県での税の還付を受け、転入先の県で納税しなければならないわけであるが、今回の改正により、こうした手続が不要となり、自動車所有者の負担が軽減されることも期待される。
一方、今回の制度改正は、多数の自動車所有者、自動車販売業者に影響を及ぼすものであることから、1年間の周知徹底期間を置き、平成18年4月1日以降の登録から適用することとなっている。この間、国における広報にあわせて、本県においても、定期課税時に送付する納税通知書に当該制度改正のチラシを同封することを初め、県税事務所の窓口や関係団体を通じてのリーフレットの配布、県の広報媒体への掲載などを通じ、制度の周知に努めたいと考えている。
徴収対策については、制度改正の周知はもとより、納期内納付率の向上をめざした納期限の周知などの広報活動を積極的に展開し、また、納期内に納付のなかった者に対しては、定期的な催告に加え、県外転出が判明した時点で文書催告や電話催告を行うなど、これまで以上に徴収を強化していきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  以上で私の質問を終わる。最後に一言だけ申し上げたいと思う。三位一体の改革により、これは一番最初に申し上げたが、各自治体の能力に応じて歳入というのは変わってくる時代が来ると思う。そういった意味では、皆様方のご努力を切にお願いをするとともに、ご精励をお祈りをして、質問を終わる。

 

 

平成17 平成17年度予算特別委員会 (第5 315日)

 

○(岸口実 委員)  先ほど、松本委員の質問と一部テーマが重なるところもあるが、角度を変えた質問であるので、よろしくお願いをしたいと思う。
それでは早速、質問に入りたいと思う。
まず、中小企業対策について、3点、お尋ねしたいと思う。
県内中小企業の景気動向についてである。
バブル経済の崩壊、失われた10年と言われて十数年が経過をした。この間、各企業は不良債権処理、リストラ、経営統合等さまざまな再生への努力を続けた。そして、昨年からようやくその成果が数字としてあらわれ始めた。上場企業を初めとする大手企業の決算発表の記事には、「増収増益」「史上最高益」の文字が目につくようになり、中でもトヨタ自動車に至っては、2年連続で経常益が1兆円を超えるとの報道もなされている。
大手企業の収益は大きく改善をしているが、いま一つ実感がわいてこない。どこにその原因があるのかを考えた。やはり、この大手企業の業績改善を支えた要因の一つが中小企業の努力と犠牲にあるからだと私は考えている。やはり、地元中小企業の収益改善、業績の回復がなければ、その地域の景気回復の実感が得られないものになるからである。
そこで、まず、県下の中小企業の経営の状況と今後の見通しについて、どのような認識を持っておられるのか、また、不安材料がないのかについてお尋ねをしたいと思う。

○(深田経営支援課長)  日銀神戸支店の昨年12月に発表された短期経済観測調査、短観と呼ばれているものであるが、これによると、県内中小企業の平成16年度の売上高については、前年比3.4%の増加が見込まれている。経常利益については、前年比17.1%の増加が見込まれているなど、大手企業の水準は下回るものの、中小企業の動向も総じて好転しているところである。
また、金融面では、県下全体としては、全企業のことであるが、企業の資金需要が低調に推移しているのが現状である。一方では、県中小企業融資制度であるが、この制度融資の17年1月末までの融資実績を見ると、前年度同期比で件数・金額とも1割程度増加している状況である。
しかし、下請中小企業を対象とした経営動向調査、これは昨年の10月、11月、12月期、いわゆる第3四半期であるが、この第3四半期において操業割合がやや減少している。それとともに採算状況については、「よくなった」とする企業が若干減ってきている状況が見られ、これまで回復傾向をたどってきていたものが、ここに来て若干厳しい様相を示してきているのかと理解している。
このように、県下の中小企業の経営の現状については、明るい兆しがうかがわれるとは言うものの、なお足踏み状態が見られる。加えて、中国等の海外需要が先行き不透明であることや、鋼材・原油等原材料費の高騰等の不安材料もある状況である。このような状況である今が景気回復の勢いを持続させ、安定した成長へとつないでいくべき重要な時期であろうかと認識している。

○(岸口実 委員)  足踏み状態ということであるが、特に中小・零細企業に対する支援は今後もよろしくお願いをしたいと思う。
次に、地場産業の復興による自然災害被災地域の経済活性化についてお尋ねをする。
阪神・淡路大震災から10年が経過した。この間、経済・雇用の面においても、関係者挙げて震災からの復旧・復興等に取り組まれ、平成13年度に「ひょうご経済・雇用再活性化プログラム」の策定、そして今年度には「ひょうご経済・雇用再生加速プログラム」が策定された。その結果、一部では明るい兆しが感じられるとの意見を耳にするようにもなった。
しかし、私には、先ほど申し上げたように、被災地域の経済が以前の活力を取り戻せていないと感じる。被災地には、以前から特色ある産業が集積した地域がある。例えば、神戸地域では、ケミカル、酒造などの地場産業が全国的な知名度や産業の集積によるメリットを生かして活発な経済活動を展開してきた。こうした地場産業が牽引役となって、地域全体の経済の活力が高められていたと考えるものである。
しかし、地場産業が全国的な不況の影響もあって、なかなか震災以前の活力を取り戻すに至らず、それが被災地の経済に力強さが回復しない一因と感じている。仮に、地場産業の不振が阪神・淡路大震災という自然災害によるものであるならばまことに残念でならない。県の経済界にとって大きな損失となるものである。
また、昨年の台風23号により、豊岡のかばん産業、西脇の織物業、淡路のかわら産業などの地場産業が大きな被害を受けた。これらの産業の回復なくしては被災地域の経済・雇用の復興はあり得ない。まずは地域経済を牽引する地場産業の復興を図り、地域経済に活力を波及させることが重要であると考える。
中小企業の振興は、県の経済が発展するための永遠の課題であるが、自然災害に被災した地域の経済を活性化させるため、地場産業の復興にどのように取り組まれるのか、ご所見をお尋ねする。

○(江木産業労働部長)  ケミカルシューズや灘の酒は消費者ニーズの多様化・高度化等により、震災前から縮小傾向が続いていた。その中で震災により大きな打撃をこうむった状況にある。業界の懸命な努力と、これを応援する私ども県の復旧対策により、右肩下がりのトレンドを食いとめるまでに至っていないが、先進的な企業を中心に製品の高付加価値化や販路開拓等への積極的な取り組みがなされている現状にある。
例えば、ケミカルシューズ産地では、震災前は1,980円のスーパー向けの製品が中心であったが、今では、ある企業では、革製の婦人の高級パンプスやブーツ等を東京で小売店を展開している企業も出てきており、個別企業レベルでは相当な復興を果たしている状況にあるのではないかと考えている。
また、台風23号等によっても、豊岡かばん、播州織等の地場産業が大きな被害を受けた。被害実態に応じて、制度融資の拡充、利子補給制度の創設、イメージアップ対策を機動的に実施をしたし、何よりも企業の努力により、予想を上回るスピードで復旧は進み、おおむね被災前の生産体制、供給体制を回復したのではないかと考えている。
しかし、こうした地場産業を取り巻く環境は、国際競争の激化や成熟社会へと移行する中での消費者ニーズの多様化等、今後ますます厳しくなることが予想されている。こういう状況の中では、かつての過去の成功体験、これへの執着をいかに断ち切るかなどが重要なキーポイントになるのではないかと考えている。
こうした考え方のもとで、今後は、まずは販路という考え方に立ち、新製品・新技術開発支援や大手小売業者との商談会開催など、これまでの取り組みに加え、産地の個性を生かして市場での優位性を確保するためのブランド戦略を積極的に支援をしていきたいと考えているし、このほか、中小企業活性化センターで取り組む「マーケティングナビゲートシステム」を活用し、商品やサービスの販売力の強化をするなど、売れるものづくりを積極的に推進し、地場産業、ひいては地域経済の活性化に一層努力をしてまいりたいと考えている。

○(岸口実 委員)  地場産業は、やはり、その地域の花形産業であったと思うし、また、すそ野が広い業種がそのほとんどであると思う。こういう自然災害の後などには一番のイメージを上げていくというか、復旧・復興をアピールする一つのいい材料になると思うので、そういった意味でも、自然災害による地場産業の復旧・復興をよろしくお願いしたいと思う。
続いて、地域金融支援保証制度の運用についてお尋ねをする。
ここ数年、中小企業に対する支援策を相次いで創設をし、地域経済を守ってこられたご努力に感謝を申し上げたいと思う。また、その成果もあり、一時期の危機的状況は脱したものと思われるが、地域の中小企業の経営改善や安定を進めるためにも、より一層の支援策の充実をお願いしたいと思う。
これまで、中小企業金融を支えてきたのは、保証協会による保証制度であると私は考えている。この保証制度は、本来、信用力の低い中小企業者に対する支援策と理解をしている。しかし、現実は、この本来の目的からずれ、金融機関のための制度と化してしまっているのではないかとさえ感じるものである。
民間金融機関はどんなに小さな融資にでも担保を要求し、また、保証協会の保証をつけなければ融資を実行しない。当然、保証料は借り主が負担をし、また、借り主が返済不能に陥った場合には協会から代位弁済が受けられる。この保証制度により、民間金融機関は全くリスクを負わずに守られることになる。融資に際してのさらなる事業評価手法の開発や、民間金融機関による担保・保証に過度に依存しない積極的な融資の姿勢が望まれる次第である。
こうした中、県では、17年度に地域金融支援保証制度を創設されるが、これは私が期待を寄せている新規事業の一つである。この制度の融資目標額は100億円とのことであるが、この目標額の設定の根拠とは一体何なのか、また、融資対象は何社ぐらいを想定しておられるのか、また、相談から実行までどれぐらいの時間を想定しておられるのかなど、この制度の基本的な仕組みについてお尋ねをする。

○(足立経営支援課参事)  信用力に乏しい中小企業者に対しては、これまでから信用保証協会が金融上の公的保証人となることにより、円滑な資金調達に資する役割を果たしてきたが、保証枠を超えている場合やリスクが高くて保証が得られない場合があることから、資金繰りに支障を来す中小企業も見られる。そのような中小企業者に対する保証制度を創設することで、若干、保証料は高いものの、無担保・第三者保証人なしでの融資が受けられるようにするものである。なお、部分保証制度を導入し、保証に当たり金融機関にも一部リスク負担を求めることとしている。
融資目標額については、100億円としているが、これは保証協会の保証つきで、本年度に創設したスコアリングモデル活用型の経営活性化資金が目標額200億円に対し、平成17年1月末現在で約1,100件、140億円の実績があり、当地域金融支援保証制度はさらにリスクの高い層を対象としていることから、融資目標額を活性化資金の半分程度の100億円としたところである。
また、融資限度額は3,000万円以内としているが、先ほどの経営活性化資金の実績から見て、1社当たり2,000万円の融資実行により500件程度の資金需要があるものと想定している。また、本制度もスコアリングモデルを活用することにより、迅速審査を行い、最短でいくと申し込みから1週間程度で融資実行できるものと考えている。
県としては、この保証制度の積極的な利用を促進することで、いわゆるミドルリスク層の中小企業者の資金調達が図られることを期待している。

○(岸口実 委員)  特に今回の無担保・無保証ということであるので、こういう制度をもっと多くしていくことが新たな起業家の育成につながってくると思うので、ぜひよろしくお願いをしたいと思う。
次に、障害者の雇用・就業の促進についてお尋ねをする。
障害者の雇用・就業の促進については、昨年6月の本会議でも質問したが、障害者の雇用・就業環境は依然として厳しい状況が続いている。障害者の雇用・就業状況の抜本的な改革のため、肌で感じ、数字にあらわれ、そして目で見える形での成果の上がる施策の立案と実行を要望するものである。
利益を優先する企業経営とユニバーサルサービスは相反する側面があるが、ユニバーサル社会の実現に向けた企業努力は社会的な信用を高め、それが企業経営に好結果をもたらすことで企業理念に一致するはずである。
平成15年に改正された環境の保全と創造に関する条例は、自動車の運行規制による環境保全という面で企業の果たすべき社会責任を明確にした条例であるとも言える。障害者の雇用・就業についても、同じように企業の社会責任を明確にすることが求められる。そのためには企業や雇用主において、障害者雇用の拡大という社会責任に対する意識の向上を図るとともに、ハード・ソフト両面にわたって障害者の雇用拡大に向けた企業の取り組みを支援する施策を展開しなければならない。
県では、このためのハード整備に関し、17年度において「事業所ユニバーサル貸付」を創設することとされているが、この貸付はどれぐらいの事業所で行われるのか、また、その結果、どれくらいの雇用と就業が達成できると見込まれているのかお尋ねをする。

○(川村産業労働部参事)  障害者の雇用・就業については、ユニバーサル社会の実現の観点からも、企業の社会的責任に強く訴え、その拡大を図っていく必要があると認識しており、労働、保健福祉、教育、さらには事業主団体等の関係者で構成する「障害者雇用・就業支援ネットワーク」を構築しており、各支援機関相互の連携を図りつつ、障害者雇用に係る企業への啓発、支援を行っている。
委員ご指摘の「事業所ユニバーサル貸付」は、雇用義務を特例的に軽減する除外率制度があるが、これが段階的に縮小されており、運輸、鉄鋼等の業種では一層の障害者雇用の取り組みが必要となっている。こうした業種を初めとする中小企業の事業所において、職場環境や作業施設の設置等が必要となる場合の支援策として、来年度創設することとしているものである。
同制度においては、障害者のほか、高齢者雇用や事業所託児施設の設置等も対象としており、融資目標額は、既にある「観光施設ユニバーサル貸付」とあわせて5億円としている。設備投資の費用やそれに伴う障害者雇用数については、業種・業態によってさまざまであり、一律に定めることは難しい面もあるが、初年度は10件程度を目標にしたいと考えている。
今後、この貸付制度のほか、既存の各種の障害者雇用助成制度の周知・活用に努めるとともに、障害者専門の無料職業紹介事業など各般の施策により、障害者法定雇用率1.8%の達成に努めてまいりたいと考えている。

○(岸口実 委員)  景気が回復して、企業に余力が少しずつでき始めたときがこういう絶好のいいチャンスというか、機会であると思うので、この機に障害者の雇用・就業の促進をよろしくお願いしたいと思う。
次に、商店街支援策についてお尋ねをする。
まず第1に、ワンストップの商店街対策についてお尋ねをする。
県では、さまざまな方面から商店街対策に力を注がれている。もともと地元商店街、小売業者は、まちづくりや地域のコミュニティの中心的な役割を果たしていたと聞いているが、現在、商店街は大規模小売店舗の進出、コンビニエンスストアの出現に伴う小売流通形態やライフスタイルの変化により、大変厳しい環境に置かれている。
商店街の中には「店舗数がピーク時の2分の1、売り上げは3分の1、あと数年で商店街活動自体ができなくなる」との声も聞かれるようになったものもある。商店街は地域の元気アップに欠かせないものであり、商店街支援の積極的な展開を重ねてお願いをする。
商店街対策として、これまで産業労働部においてさまざまな支援策が展開されているが、このたび、県土整備部において、大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例の制定、まちづくりの観点からハード整備の総合的な協議・調整を図ることとなり、また、県民政策部においても、商店街の空き店舗の活用法の検討が行われ、農林水産部においても、地産地消の直売所として商店街の空き店舗を活用することがあることも聞いている。
こうした商店街をめぐるさまざまな施策の実効性を高めるためには、商店街の振興に係るこれらの施策を一体的・効率的に展開することが求められる。そのためには、よく言われる役所の縦割り行政でなく、ハード・ソフト両面にわたり、商店街に関するすべての施策を一括して取り組む部署が必要ではないかと考える。まちづくりの一つの要素として商店街を位置づけ、役割を明確にするなどの対策が必要ではないでしょうか。
そこで、商店街支援策について、一つの部局が自覚と責任を持って進めるべきと考えるが、当局のご所見をお尋ねする。

○(黒岩商工労働局長)  ご指摘のとおりであり、商店街活性化とは別の目的で実施されている施策であっても、商店街活性化と関係の深いものが多く存在している。
したがって、商店街活性化を担当している産業労働部としても、みずから所管している商店街活性化施策に加え、都市計画を初めとして再開発や区画整備等の面整備、道路、街路、環境、交通、公共施設、住宅、ユニバーサル社会、地域安全、子育て支援、介護、コミュニティビジネス、地産地消等広範な分野の施策について、商店街や市町に対して積極的に情報提供を行うとともに、必要があれば担当部局間で連絡調整を行い、これらの施策がなるべく一体的・効率的に投入されるように努力しているところである。
今後も、こうした努力を一層強化していきたいと考えているし、商店街活性化の主体である商店街組合やまちづくりの主体たるべき市町の担当者に、より一層広い視野で考えて行動してもらうための研修事業などに力を入れてまいりたいと考えている。

○(岸口実 委員)  ありがとうございます。
最後に、商店街支援策の弾力的運用についてお尋ねをして質問を終わりたいと思う。
来年度には、商店街支援に向けた新規事業として、テナント・ミックス計画の策定支援、商店継承バンク支援事業、地域連携イベント等支援事業、商店街・個店訪問御意見隊事業などが実施される。
なるほど、メニューはたくさんあるが、大事なことは個々の商店街の実情に即した効果的な運用であると考える。よかったと喜んでいただけるよう、結果重視の弾力的な運用をぜひお願いしたいところである。
そこで、商店街支援策の弾力的運用について、所見をお尋ねする。

○(井上商業振興課長)  厳しい経営環境にある商店街等への支援において、効果的な事業執行を確保していくためには、一つには、無理のない自己負担の確保、それから商店街にとって利用しやすい支援メニューの整備など、利用促進のための環境づくりに努めることが必要と考えている。
このような考えのもと、県では、商店街等からの要望も踏まえつつ、空き店舗対策における補助率の見直し、補助期間の延長や補助対象経費の拡大のほか、市町の随伴補助を求めている事業においては、その要件の緩和など、予算等の制約がある中で、商店街等への補助事業の拡充や要件の緩和に努めているところである。
さらに、運用面で要望の声が強く寄せられる補助金の概算払いについても、空き店舗活用支援事業等について可能な限り認めていく方向で検討しており、今後も、商店街等への補助事業の弾力的な運用に努めてまいりたいと考えている。

○(岸口実 委員)  これまでの支援策も、大体、「帯に短し、たすきに長し」というか、使いたくても使えない、そんな声も聞いている。ぜひ、弾力的な運用をお願いしたいと思う。
以上で質問を終わる。

 

平成17 平成17年度予算特別委員会 (第6 316日)

 

○(岸口実 委員)  いよいよこの予算の審議も中日であり、ちょうどお昼が本当の真ん中になるのじゃないかと思うが、これからも気を引き締めて質問に移りたいと思う。
まず最初に、明舞団地の再生についてお尋ねしたい。
午前中の質問にも県営住宅のあり方についての質問があったが、この利活用について質問させていただきたい。
県営住宅の本来の目的は、住宅困窮者のための制度であるとされている。一方では、「つくる」から「つかう」の観点は時代の流れである。この二つの視点の融合が進められている。平成14年から県営加古川神野テラス住宅でグループホーム事業の実施をしていることや、隣接する公営住宅間で空き駐車場の融通などの取り組みがなされている。新しい住宅のあり方を考える上で、このような取り組みの検証をもとに、よいものはどんどん進化をさせていくべきである。
このような中で、国の第一次地域再生計画として、明舞団地再生計画が認定されたことは意義深いものと感じている。この機会に、新しい団地のあり方をもっと柔軟に議論すべきではないか。将来を見据えた住まいのあり方の提案がなされてもよいのではないかと思う。
今、高齢化や少子化、核家族化など取り組まなければならないテーマはたくさんある。例えば、その対処策として、ケアハウスや二世帯住宅などさまざまある。明舞団地再生を今後のよりよいモデルケースとして生かすためにも、もっと踏み込んだ県営住宅の利活用を検討すべきではないかと考える。これから本格化する再生に向けて、現時点で新たな取り組みとしてどのようなものを考えておられるかなど意欲をお尋ねしたい。

○(高田住宅宅地課長)  明舞団地における県営住宅の利活用については、団地活性化などを目的として、平成16年6月、国の地域再生計画の第一次認定を受けたことにより、本来、公営住宅に入居できない若年子育て世帯や介護を必要とする団地内高齢者のその子供世帯等についても入居を可能としたところである。
その後、さらに踏み込んだ利活用の推進のため、県から国に対し、地域再生計画の新たな支援措置などを提案し、この提案を受け、国から県営住宅の住戸を住民団体やNPOが運営するコミュニティ拠点、高齢者生活サービス拠点などとして柔軟に目的外使用できる方針が示されたことから、平成17年1月に、地域再生計画の変更の認定申請を行ったところである。
今後、その変更認定を受けた後、これら地域再生計画制度による県営住宅の利活用策を団地住民との協議を行いながら早期に実施していきたいと考えている。
また、高齢化や少子化、核家族化などへの対策については、既存県営住宅の利活用のほか、県営住宅や中央センターの建てかえ事業などの中で、高齢者生活サービスの提供や、二世帯住宅等多様な住宅供給などを積極的に進めていくこととし、明舞団地再生が今後の団地再生のモデルケースとなるよう努力していきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  特に二世帯住宅というのは、少子化対策に非常に効果があると考えているので、ぜひよろしくお願いしたい。
次に、JR朝霧駅を含めた団地再生プランについて質問する。
明舞団地は、JR朝霧駅から徒歩5分という絶好の立地にある。神戸はもちろん、大阪市内への通勤も1時間とかからない恵まれた立地条件である。他の県営住宅と比較をしても、なかなかない条件ではないかと感じている。
この立地特性を生かした再生プランを期待するものであるが、来年度の明舞団地エリアマネジメントの推進が新規事業に盛り込まれている。策定内容としては、壁面、屋根の色彩範囲や、敷地内植栽方法の方針、バリアフリー誘導基準の設定とされているが、団地の中に駅があるぐらいの一体感を持って、朝霧駅周辺のまちづくりと同時に取り組んでいただきたいと思う。団地内、駅周辺が一体的に整備されてこそ初めて本当の再生ができるものと考えている。
そこで、明舞団地の特性についてどのように認識をし、どのように再生プランに反映させていくのかお尋ねする。

○(高田住宅宅地課長)  県の明舞団地再生に係る取り組みは、住民の一斉高齢化、住宅の一斉老朽化が進むオールドニュータウン再生のモデル事業として実施していることから、県及び県の住宅供給公社が開発した明舞団地の区域内を対象として進めてきたところである。
朝霧駅周辺等の団地区域外のまちづくりについては、基本的には、地元市である神戸市、明石市が主体となって取り組むべきものではあるが、県としても、明舞団地の特性は、朝霧駅から徒歩圏という利便性にあると認識しており、その立地特性をより有効に生かすためにも、駅周辺の整備は明舞団地の再生にとって重要な課題であると考えている。
明舞団地再生計画においても、朝霧駅から団地内に伸びる中央幹線をにぎわいを創出する「まちの軸」として位置づけており、この中央幹線沿道を含めた駅周辺のまちづくりについて、団地の再生の推進にあわせ、地元市が積極的に取り組むよう強く働きかけていきたいと考えている。
また、来年度に設置する明舞団地エリアマネジメント委員会に地元市に参画を求めることとし、当委員会の中で駅周辺を含めた一体的な景観形成やバリアフリー化などのまちづくりのあり方についても検討を進めていきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  特に住んでおられる方の視点で考えると、団地の敷地の中と外というのは余り関係のないことだと思う。そういった意味においても、駅を含めた一体化というか、利便性を上げる、バリアフリーなど一番わかりやすいと思うが、特にこういった点について、今後再生プランに盛り込んでいただくようよろしくお願いしたい。
次に、神戸空港へのアクセスについて伺いたい。
2006年は神戸空港の開港、2007年は関西国際空港2期事業限定供用の年になる。今回の本会議で我が会派の加藤 修議員から、神戸空港と関西国際空港のアクセスについての質問をさせていただいたが、ここでは、県内各地からの神戸空港へのアクセスについてお尋ねをする。
現在県内には、伊丹空港、但馬空港、県外には岡山空港、鳥取空港などがある。県内のそれぞれの地域により、利便性が異なってくる。主として阪神地域は伊丹空港、西播磨以西は岡山空港、但馬地域は但馬空港や鳥取空港、淡路地域は関西国際空港などが利便性の高い空港と言える。神戸空港は、残る神戸地域、東播磨地域、北播磨地域、中播磨地域などの地域の方々を中心に優位性があると思われる。
そこで、公共交通を柱とした県内各地からの神戸空港へのアクセスをどのように整備をするのか、県民の利便性をどのように確保するのかについてお尋ねする。

○(陰山県土整備部長)  神戸空港は、本県の空の玄関口であり、広く県民が利用する広域交流施設であることから、都心に近接したすぐれた立地条件を生かすとともに、県内各地からも利便性の高い多様なアクセスを確保し、県民利便に資する必要があると考えている。県内から神戸空港へのアクセス手段については、空港の開港に向けて延伸工事を行っているポートライナーを初め、タクシーやマイカーの乗り入れのほか、リムジンバスの導入を考えている。そのうち、マイカーについては、このたび駐車場を設置・運営する神戸空港ターミナル株式会社が開港後約2年間、航空機への搭乗者に限り24時間まで駐車場料金を無料とする割引措置を決めている。空港設置者である神戸市としても、利用者の利便性向上を重視していこうとする姿勢をPRしているところである。
また、ほかの空港の実例等を見ても、リムジンバスの導入も大変重要と考えている。これまで神戸市とともにバス事業者に、明石方面も含め県内各地からの神戸空港への運行を強く要請してきている。現在、姫路、三田、西脇、淡路方面から神戸空港への路線開設を初め、その他の路線についても前向きに検討をしていただいている。県としては、広域的な観点から、神戸空港への利便性の高い多様なアクセスが確保できるように引き続き関係事業者への要請に取り組んでいきたい。

○(岸口実 委員)  先ほどは申し上げなかったが、加藤 修議員が質問したときに、関西国際空港と神戸空港を海上輸送をという話があった。それにあわせて、例えば、明石港であるとか、姫路港といったところも結んでいただければ、利便性がよりよくなるんじゃないかという思いもする。
また、先ほどのリムジンバスの件であるが、特に私の地元である明石を考えてみると、鉄道網が非常によく整備をされているので、鉄道との競合ということになると思うが、そうなるとバスの事業者が参入しにくいのかという思いもある。ただ、これも利用者の立場に立つと、乗りかえの回数とか料金であるとか、そういった細かなところのサービスを充実させていく必要があると思う。そういった意味においても、明石からもぜひリムジンバスを出していただきたいということを続けて要望していただきたいと思う。よろしくお願いする。
次に、まちづくりと商店街についてである。
このたびの大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例では、交通渋滞、駐車・駐輪、騒音、廃棄物、町並みの景観などさまざまな問題に対し、総合的に協議・調整することとされている。この条例の趣旨、目的には、全く異論はなく、適正運営、実効あるものとして期待をしている。
しかし、1点だけ気になるのが、地元商業事業者との出店調整をしないことということになっている。大規模集客施設と地元商店街を適正に配置することは、都市計画、まちづくりの大きな要素と考えている。産業労働部に対しての質問でも申し上げたが、商店街に関するハード・ソフト両面のすべてを一括して取り組む中で、県土整備部としても産業労働部と連携しながら、まちづくりの一つの要素として商店街を位置づけ、役割を明確にするなどの対策が必要ではないかと思う。
そこで、まちづくりと商店街をどう結びつけていくのかご所見をお尋ねする。

○(原田まちづくり課長)  商店街については、町中における商業拠点として中心的な機能を有しており、中心市街地において求められる居住、あるいは文化、福祉、業務等多様な機能と連携し、まちのにぎわいを創出する役割を有していると考えている。
このため、商店街においては、商業の活性化に加え、町中の居住人口の増加、あるいは人が集まる公共公益施設の整備、あるいは歩きやすく、快適な空間の整備など、さまざまな観点からまちづくりと一体となった取り組みを進める必要があると考えている。
具体的には、例えば、商店と住宅が混在したミックストユースと呼ばれるこういった形態を促進するために、容積率を緩和するといった地区計画制度を活用するとか、空き店舗を地域コミュニティ施設に転用したり、多目的広場の整備などを図るまちづくり交付金の活用であるとか、あるいは歩道や建築物のバリアフリー化の推進など、総合的な施策の展開を通じ、商店街を含む中心市街地のにぎわいを取り戻し、魅力あるまちづくりを進めることが大切であると考えている。
なお、大型店の立地規制、あるいは誘導を必要とする場合においては、このたび提案している「大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例」を的確に運用することに加え、特別用途地区、あるいは地区計画等市町が運用している都市計画制度の活用を県として支援していきたい。

○(岸口実 委員)  商店街とまちづくりというのは本当に難しいテーマであると思うし、ハードのみならず、ソフト事業、これは産業労働部になると思うが、こういったところとの連携がうまくとれない限り、なかなか片づかない問題ではないかなと思うので、ぜひ一層の取り組みをお願いしたい。
次に、明石川水系の河川整備についてである。これも午前中、加古川、武庫川という二つの質問があったが、今度は明石川の質問である。
河川法をさかのぼると、明治29年に旧河川法の制定、昭和39年の新河川法、平成9年の河川法の一部改正となっている。旧法による治水、新法による治水・利水、一部改正によって、治水・利水・環境と河川整備の目的が時代の変遷とともに変わってきた。ここでは、最も基本の部分、治水について質問したい。
明石川水系の過去の主な洪水被害は、昭和20年10月に阿久根台風、続く42年7月の梅雨前線により発生をしている。特に阿久根台風では、多数の家屋が全壊、流出し、被災者は3万人以上に上ったとの記録がある。
これまでの治水対策として、昭和28年度に築堤と河道の拡幅整備が始まり、昭和43年度には、高潮対策事業、昭和54年度からは西神ニュータウンなどの流域の大規模宅地開発にあわせて住宅宅地関連公共施設整備促進事業の実施、また、本川の福住川合流点から上流と支川の櫨谷川、伊川では、神戸市により都市基盤河川改修事業として整備が進められている。
以上のような努力を経て、台風23号による大きな被害というのは逃れたわけである。しかし、これはあくまで結果であり、河口周辺の地域では、避難勧告が出され、大変な不安が募ったというのが実情である。今後も一層の早期の治水対策をお願いしたいと思う。
明石川水系の治水に対する課題として、JR山陽本線から嘉永橋、上明石橋から玉津橋付近、西盛橋から木見川合流点の3点にかけては、計画高水流量に対し、流下能力が小さいのではないかと思われる。昨年の台風など集中豪雨は、これまでの私たちの常識をはるかに上回るものとなっているが、今後どのような治水対策を行っていくのかお尋ねする。

○(原口土木局長)  明石川水系については、支川の伊川、櫨谷川も含め、河口から上流までの全区間で河川改修を進めており、本川においては、ご指摘の3区間を除き、おおむね改修済みとなっている。
流下能力が不足しているこの3区間の取り組み状況は、県事業によってJR山陽本線から嘉永橋区間において、現在、河床掘削に向けて嘉永橋のかけかえ事業に取り組んでいる。平成17年度から地元説明、用地買収に着手する予定となっている。
また、上明石橋から玉津橋の間においては、平成20年度の完成をめざし、河道拡幅工事を実施中である。
このほか、神戸市の事業により、西盛橋から木見川合流点までの区間においても、築堤、護岸、橋梁改築がほぼ完成をしており、今後、河床掘削を実施する計画となっている。
昨年の台風23号での災害など、近年短時間での集中豪雨が多発しており、各地で計画を上回る出水が発生をしている。このようなことから、明石川水系においても、今後目標とする治水安全度を達成するための河川改修を着実に進めるとともに、計画を上回る洪水に対応するために、明石市が作成するハザードマップへの支援、あるいは防災情報伝達システムの構築などの減災対策を河川整備計画に位置づけ、積極的に取り組んでいきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  よろしくお願いをする。
最後に、まちづくり交付金の活用についてお尋ねをしようと思っていたが、よくよく中身を調べてみると、実施主体が市町とのことであったので、要望ということにしてこの質問を終わりたいと思うが、まちづくり交付金制度、兵庫県はこれまで、2ヵ年になるか、全国の中でも非常に実績を上げておられるということである。今後も、ぜひこういう事業は積極的に取り組んでいただきたいと思う。特に、明石の西部に二見という地域があり、皆さんご承知かと思うが、山陽電車の駅が新しくできた。また、イトーヨーカドーという大型店舗が出現をし、町並みが一変をした。そのことによって人の流れが大きく変わったり、また、これまでため池だったものが駅の目の前であるので、玄関口に池が残ってしまうという状況があり、町並みの変化にあわせて柔軟に対応できるようなまちづくり交付金の制度をどんどん活用して、それぞれの地域の要望にこたえていければという思いがあるので、そういった意味においても、これから県が主体的に市町を先導する形で交付金制度を活用していただけるようにご指導をよろしくお願いしたい。
以上で質問を終わる。

 

平成17 平成17年度予算特別委員会 (第7 317日)

 

○(岸口実 委員)  早速、質問に入らせていただきたいと思う。
まず、第1に、夢の持てる教員像について2点お尋ねしたいと思う。
まず、その1は、優秀な教員の確保等についてである。
私は、幼いころ、教員は聖職と言われていた。周りから「学校の先生になりなさい」と言われたり、また、友達が「学校の先生になりたい」と言えば、褒められていたのを覚えている。私たちは、先生に対するあこがれや親しみを抱きながら、学校へ通っていたということになる。
先日、寝屋川市の小学校で痛ましい事件が起きた。この事件で犠牲になられた先生に対し、児童やその父兄から惜しみない言葉が寄せられていた。熱心に教育に取り組まれる先生の存在にほっとすると同時に、なぜこのような先生がと残念さが残るわけである。
時の流れとともに、校内暴力、体罰、不登校、いじめ、そして学級崩壊、学力の低下など、学校を取り巻く環境は厳しさを増す一方である。
こうした中、教員が敬遠される仕事にならないかと心配をしているところであるが、小学校の教員採用候補者選考試験の受験者状況を見てみると、10年前の平成7年度が1,152名、5年前の平成12年度が1,469名、平成17年度、ことしであるが、1,533名となっている。この数字を見る限り、まだまだ意欲を持っておられる方々が多いと思われるので、一安心しているところである。
一方で、神戸市を除く市町立学校の退職者数を見てみると、平成13年度は、定年による退職者が152名、その他の理由による退職者が252名。平成14年度は、定年171名、その他の理由によるものが331名。15年度は、定年204名、その他390名となっている。この3年間を合計すると、1,500名ということになる。それに加え、現職教員の年齢構成から、ここ数年多くの退職者が出ることが予想され、19年度には定年による退職者だけで約430名が見込まれている。また、教員の年齢構成を見ると、こうした退職者数の増にも見られるように、年輩者の率が高く、アンバランスなものとなっている。
そこで、少子化による需要減はあるものの、退職者を補う採用をしなくてはならないわけであるが、採用に当たり、どのように質、数を確保していくのか、また、この年齢間のアンバランスをどのように是正していくのかお尋ねする。

○(小林教職員課長)  委員ご指摘の教員の年齢構成であるが、とりわけ小学校教員の年齢構成のアンバランスであるとか、これを背景として、近い将来、教員の大量退職時代が到来することは、本県ばかりでなく、全国的にも大きな問題となっている。
今後、教員の大量退職時代を迎えるに当たり、ベテラン教員が一気にいなくなることから、学校の教育力のレベルダウンとか、昇進管理上の問題などが危惧されるほか、大量退職に見合う数をそのまま正規職員で採用した場合、現時点で既に生じている年齢構成のひずみを今後も繰り返してしまうということになる。
そのため、この大量退職により生じる教員数を単に新規採用者だけで確保するのではなく、この大量退職者の中には、困難な時代を乗り越えてきた豊かな経験や知識を有する優秀な人材が含まれていることから、これらの人材の積極的な活用を図る必要があると考えている。
これからは、このように経験豊かなOB教員の活用とか、優秀で意欲のある学校外の人材を特別非常勤講師制度により採用するなどの施策を組み合わせながら、優秀な教員を安定的に確保しつつ、長期的に年齢構成のひずみを是正することをねらいとした計画を現在、策定している。
また、あわせて、新規教員採用の工夫改善であるとか、現職教員の研修の充実など、資質向上にも継続して取り組んでいく考えである。
○(岸口実 委員)  対策を立てておられるということであるので、ぜひよろしくお願いしたいと思う。
続いて、教員に対する施策についてである。
学生時代には現場で実習を受け、教員試験の難関を乗り越えて教壇に立たれる教員でありながら、近年、子供たちの指導力に疑問があるとされる教員や、指導に悩み、自信をなくし、心を病まれる教員もおられると聞いている。私の知人の子供さんの例では、小学校の6年間のうち3年間は、年度途中で担任が交代されたということである。また、別の例では、1年間に2回も担任がかわったということも聞いている。また、この今週の日曜日の朝刊には、和歌山県の中学校の教師が見知らぬ女子高生に抱きついたという記事も出ていた。
本県では、平成13年度から15年度までの3年間に、懲戒免職となった13名を含め、交通事故、体罰、わいせつ等で合計91名の教員が懲戒処分を受けている。
一方で、子供たちの教育に変わらぬ情熱をささげる熱血先生も、まだまだ大勢おられるわけであるけれども、ただ、先ほどの事件と違って、こうした熱血先生は、なかなかマスコミに取り上げられないのが大変残念である。
こうした中、本県教育委員会では、教育を改革するためのさまざまな施策を講じておられる。教育に関する改革については、さまざまな視点のあるところであるが、重要なのは、第一線の現場で教員が途中でやる気を失わないような施策とすることである。教育委員会、校長、教職員がそれぞれの役割を自覚と責任を持ってしっかりと果たすことが、学校立て直しの第一歩であると考えている。
教員に対して、従来からの新任管理職メンタルヘルス専門研修、指導力向上を要する教員に対する研修等に加え、平成17年度から優秀な教職員の表彰制度を創設することとされている。今申し上げたように、教員に対する施策の基本は、教員のやる気を刺激し、向上させることにあると考えるものであるが、この表彰制度について、どのような目的で実施し、また、どのような効果を期待されておられるのか、お尋ねする。

○(青山教育次長)  兵庫の教育改革を推進し、地域との連携を図りながら、特色ある学校づくりを進めていくためには、何よりも教育の担い手である教職員が高い志と情熱を持ち、新たな教育課題に果敢に挑戦していくことが重要である。そのための資質能力や指導力の向上が求められているところである。
県教育委員会では、平成13年度に設置した「教職員の資質向上に関する懇話会」の提言を受けて、教職員のパワーアッププランを策定して、教職員の資質能力の向上や士気高揚を図るため、県立学校における人材公募制度、あるいは若手教職員による自主研究グループ活動推進事業、また社会体験研修等を実施するとともに、教職員の意欲を高めるための表彰のあり方についても研究を進めてきた。平成17年度から、従来の表彰制度に加えて、多くの教職員から信頼され、教育実践に工夫、努力を積み重ねてきた教職員に対する表彰制度を新たに創設することとした。
この表彰制度においては、例えば、部活動で児童生徒の能力・技術の向上にすぐれた指導力を発揮し、県・国レベルで優秀な成績を上げた者を初め、全国的な研究大会において発表・提案を行い、高い評価を受けた者、多くの教職員が利用できるような教材・教具の開発・普及に功績のあった者など、他の教職員の模範となるような優秀な教職員を表彰することとしている。
このように、教職員の熱意や努力に報いることにより、教職員一人一人が意欲を高め、その持てる力を最大限に発揮することで、教職員全体のパワーアップを図り、兵庫の教育のさらなる活性化を図っていきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  先ほどの質問にもあったとおり、子供さんが夢を持てないというか、逆に先生になりたいという、そういうあこがれを持てるような、目に見える形の施策をお願いしたいと思う。
次に、学校の安全性の確保について質問させていただく。
本年6月の代表質問で質問させていただいたが、大阪教育大学附属池田小学校の事件以来、学校の安全が失われ続けていると感じている。この事件を機に、県警ホットラインの創設や学校危機管理ガイドラインの作成が行われるとともに、各市町においても、監視カメラの設置や防犯ブザーの配布など、独自の取り組みが進められてきた。
全国的に学校の安全確保に対する関心が高まる中で、また寝屋川市の小学校で事件が起こった。こうした事件や事故が起こると、児童、教職員等には大きな影響を与え、PTSDなど心のケアが必要となる。その上、完全な現状の回復は不可能であり、事件や事故の代償や犠牲は余りにも大きなものがあると感じている。
大事なことは、二度とこうした事件や事故を起こさないとの決意と姿勢を迅速に社会全体に伝えることである。早急に、かつしっかりと社会の安心感を取り戻していかなければならない。
県警では、昨年の実績で、警察官が現場到着までに要する時間は平均7分48秒であったとされている。学校においても、事件が発生した場合に、警察官が駆けつけるまでの間、自衛手段がどうしても必要になる。大阪府では、学校に警備員を導入することを表明した。このことは、事件発生の抑止力が期待できるものであると同時に、自衛の手段にもつながってくる。
国では、平成17年度において、各都道府県への委嘱事業として、「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」を実施し、防犯の専門家や警察OB等を地域学校安全指導員として配置することや、学校安全ボランティアをスクールガードとして育成するなど、学校の安全体制の整備についても検討することとしている。
学校の安全確保については、こうした具体的な手段を一日も早く打つことが重要であると考えるものであるが、県ではどのような対応を考えておられるのか、お尋ねする。

○(滝波企画調整担当課長)  県教育委員会においては、不審者侵入など学校の危機管理について、大阪教育大学附属池田小学校の事件を契機として、平成13年度に県警ホットラインを設置するとともに、有識者の検討委員会における検討を踏まえて、学校危機管理ガイドラインを策定、配布して、その中で、保護者や地域住民と一体となって取り組む必要性を示したところである。
また、本県は広域で、都市部、山間部など地域性が多様であり、学校の立地条件が地域によって異なるため、学校の門扉や塀の有無など、学校施設の状況もまちまちであることから、県下一律の対応では十分な効果が望めないところである。
また、子供たちの安全管理を学校だけで担うには一定の限界がある。したがって、例えば、校内の見回りや通学路の見守りに高齢者の協力を得ている加西市のワッショイ・スクールの例とか、地域住民がボランティアで学校内を巡回するスクールガードを発足させる明石市の例など、地域の実情に応じて地域の支援を得たさまざまな取り組みが行われているところである。
万一不幸にも学校の安全を脅かす事件が起こった際には、これまでも、市町教育委員会や学校に緊急の通知を発信して、緊急事態にも適切な対応が図れるように、各学校のマニュアルの適時適切な見直しや安全管理項目の点検、警察や子ども110番などとの連携の強化を図るなど、学校危機管理ガイドラインに沿った指導を行って、注意喚起をしてきたところである。
学校の危機を未然に防ぐためには、地域の温かいまなざしが不可欠であるので、そういった認識に立ち、県教育委員会では、今後とも引き続き開かれた学校づくりの観点から、これまで実施してきた「地域ぐるみの学校安全推進モデル事業」による安全な学校づくりに関する取り組みについての地域住民との連携の成果を、防犯教室講習会などにおいて広く県内に情報発信するとともに、地域住民の防犯訓練への参画を促すなど、子供たちの安全確保が図られるように、市町教育委員会と連携を図りながら、家庭や地域と一体となった学校の安全管理体制づくりを支援していきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  ただ、これはやっぱり起こってからでは遅いわけであり、今のご答弁、非常にご丁寧にお答えいただいたのであるが、実は、この6月に質問させていただいたときとそんなに差異のないものである。であるから、やはり起きてからでは遅いわけであるから、何らかの対策を目に見える形でしっかりと立てていただきたいと思う。
次に、県立高校の入試制度についてである。
現在、県立の全日制普通科高校の入試制度は、学区により単独選抜、複数志願選抜、総合選抜、連携校方式と大きく四つの入試制度が併存している。また、それに加え、単位制や総合学科の推薦入試、専門学科では学区を超えた受験も可能となっている。それぞれの制度に一長一短がある。志望する学校に志願できるが学校の序列化を生みやすいであるとか、過度の受験競争が起こりにくいが志望校を自由に選ぶことが制約されることなどである。
通学距離の関係で、学区による制約を受けることがあることは理解するが、同一県内にもかかわらず、生まれた地域、育った地域によって入試制度が違うということに戸惑いを感じるわけである。
そこで、県教育委員会として、学区による入試制度の違いについて、どのような見解を持っておられるのか、また、今後どのような方針を持っておられるのか、お尋ねする。

○(武田教育長)  平成11年に出された全日制高等学校長期構想検討委員会からの報告書の中で、本県の入学者選抜制度は、ご指摘のようにそれぞれ長所・短所を有しながらも、歴史的経緯の中で一定の役割を果たしてきたが、一方で、社会が成熟化し、世の中の価値観が多様化する中で、個性を尊重する多様で柔軟な高校教育への転換、そして「行ける学校」から「行きたい学校」への選択を可能とする選抜システムの構築など、改革の視点を内容とする提言がなされたところである。
これらを受けて、平成12年に県立高等学校教育改革第一次実施計画を策定し、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりをめざす高校教育改革を推進しているところである。
この計画に基づいて、県教育委員会としては、高校の個性化・多様化を進めるとともに、単独選抜と総合選抜の長所を取り入れた複数志願選抜と特色選抜から成る新しい選抜制度を、平成15年度からまず神戸第三学区に導入したほか、平成17年度からは姫路・福崎学区に、そして平成18年度からは加印学区に導入することとしているところである。
なお、神戸第三学区における導入後2年間の検証結果を見てみると、受験学力のみによらない、あるいは学びたいことが学べる学校選択が進んでいることが確認されており、そういった意味で、所期の目的がほぼ達成できたものと受けとめているところである。また、総合選抜制度は、かつて16都府県で実施されていたけれども、現在までに既に13都県で廃止されており、残っているのは、本県を含め3府県である。また、廃止した都県の結果を聞くと、おおむねその結果は評価できるものであったというふうに聞いているところである。
今後は、こうした成果を踏まえて、県立高等学校教育改革第一次実施計画に基づいて、新しい選抜制度の順次導入に向けて取り組みを進めていく考えであるので、よろしくお願いしたいと思っている。

○(岸口実 委員)  私が言いたかったのは、制度にもし弊害があって、そのことによって地域に格差が生まれることであれば、これは非常に不幸なことであるので、そういうことのないようによろしくお願いしたいということである。よろしくお願いする。
最後に、戦争体験を語り継ぐ取り組みについてである。
戦後60年の節目を迎えた。戦中、戦後の激動の時代を生き抜いてこられた先人の方々の苦難とご努力あってこその今日である。衷心より敬意と感謝を申し上げたいと思う。
今日、我が国では、戦後生まれが人口の4分の3を占めるようになった。この議会でも、私を含め47名の議員が戦後生まれである。これらは皆、戦争を知らない、体験したことのない世代である。時代が移りゆく中、ほんの60年前の大きな出来事が、このまま風化してしまうのではないかと危惧を持つのは私だけだろうか。
私と同年代の方々の場合、その両親の世代は戦前、戦中に幼少期を過ごし、また、祖父母の世代は戦地へ赴いた年代である。私の世代の方々は、幼いころ、家族などから何かの機会に体験談を聞かされたことがあるのではないかと思う。60年前、この国がどんな状態にあったのか、人々はどんな暮らしをしていたのかなど、戦争の体験を語り継ぎ、聞き取ることは、いろいろな意味で大変意義のあることだと思っている。
先ほど述べたように、先輩方の高齢化が進む中、この機を逃すと、このような話を直接伝え聞くことができなくなるのではないかと思うものである。既に神戸市内のある私立中学校では、同校の元教員や卒業生たちが、総合学習の時間に同校を訪れ、戦争の時代の話を在校生に語り聞かせるという取り組みも行われている。
私は、何もこの場を通じてイデオロギーを問おうというものではない。県内の公立学校においても、さきの戦争の苦労話、体験話を語り伝えることが有意義であると思うものであるが、ご所見をお尋ねする。

○(重松義務教育課長)  戦争や平和についての学習は、社会科の歴史・公民分野や道徳などにおいて、戦時下の国民生活や世界の平和に関する学習を行ったり、教科等の学習との関連を図りながら、総合的な学習の時間において、国際理解教育の一環として学習が進められているところである。
この学習を進めるに当たっては、自分で資料を調べ、まとめ、発表するなどの作業的、体験的な学習を行っているところであるが、さらに、戦中、戦後を生き抜いた人々から当時の様子や苦労話を聞き取るなど、戦争当時の状況を実感的にとらえさせることは必要であると考えている。
本県では、このような実体験をした人々を学校支援ボランティアとして招聘するいきいき学校応援事業を実施しているところである。例えば、明石の空襲を体験した人を招いて体験談を聞いたり、戦時下の国民生活について、祖父母から聞き取り調査を行うなどの取り組みが行われている。
今後も、地域のこのような戦争体験者を学校に招いて、その体験を話していただいたり、その人をいきいき学校応援団として登録していただくなどして、戦争体験を語り継ぐ取り組みが行われるよう支援していきたいと考えている。

○(岸口実 委員)  やはりもうこの機でないと、直接語り、伝え聞くということはできないわけであるから、積極的な展開をお願いしたいと思う。
以上で私の質問を終わる。

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